深海の秘宝、海洋深層水の魅力と活用法

海洋深層水 海洋

スーパーマーケットやコンビニで見かける「海洋深層水」とラベル付けされたボトルを手に取ったことがある方も多いでしょう。しかし、この特別な水の性質や他の水との違いを詳しく知っている人は少ないかもしれません。

本記事では、海洋深層水がどのようなものであるか、その採集方法と利用例について詳しく説明します。海洋深層水は、豊富な無機栄養塩を含み、低温での安定性が高く、非常に清潔な水です。最近では、飲料水だけでなく化粧品にも使われるようになっています。

海洋深層水の定義と特性

海洋深層水とは、海洋学的に水深200メートル以上の海の水を指します。この水域は太陽光が届かないため、光合成が行われず水は非常に清潔で安定しています。

深海にあるこの水は、ほとんど温度変化がなく、高い圧力により体積が圧縮された状態で存在しています。例えば、水深1000メートルでの水温は約5度に保たれています。

海洋深層水の循環とその利用

海洋深層水は、グリーンランドのような寒冷地から冷やされて沈んだ後、大洋を横断しながら徐々に上昇し、循環していきます。この一連の流れは「海洋の大循環」と呼ばれ、水の旅は片道で約2000年かかることもあります。

日本近海で採取される海洋深層水も、この広大な海の循環の一環としています。日本海では、ウラジオストック沖で冷却され沈んだ水が南下し、循環して「日本海固有水」と呼ばれる特定の深層水を形成します。この水は新潟県などで採取され、さまざまな用途に利用されています。

海洋深層水の主要特性

海洋深層水には、低温安定性、栄養の豊富さ、清浄性、熟成性、ミネラルの豊富さといった五つの顕著な特性があります。それぞれの特性について詳しく見ていきましょう。

低温安定性

深海部は太陽の光が届かないため、海水の温度が安定しています。たとえば、高知県にある海洋深層水の採水施設では、年間を通じて水温が約9.5℃と一定です。この安定した低温は、水中の無機化を促進し、有害な細菌の繁殖を抑えるため、シンプルなろ過処理だけで飲用に適した水が得られます。

栄養の豊富さ

海洋深層水は、浅い水域の海水に比べて栄養素が豊富です。これは、深海において栄養素を消費するバクテリアや植物プランクトンが少ないためです。さらに、表層で死亡した魚の遺骸が分解されることで発生する栄養塩も深層に蓄積されます。この栄養素が表層に戻ると、リンやケイ酸が豊富な植物プランクトンが増加し、良好な漁場を形成します。

清浄性

水深200メートルを超える深海では、細菌の活動がほとんどなく、海水は非常に清潔な状態を保持します。生活排水や有害な化学物質の侵入がないため、水質は極めて高いレベルで維持されます。実際、深層水と表層水の細菌の量を比較すると、その数は1/1000以下になると報告されています。

熟成性

前述したように、海洋深層水は表層水よりも高い圧力がかかり、低温で細菌の少ない環境が保たれています。このため、水の性質は非常に安定し、長期間にわたって高品質が保持されます。これにより、海洋深層水は多くの用途で価値ある水源として活用されています。

ミネラルの豊富さ

海洋深層水は、マグネシウム、カルシウム、鉄など、人体で生成することができない重要なミネラルを豊富に含んでいます。これらのミネラルは通常、食事を通じて摂取する必要がありますが、海洋深層水を使用することで効率的にこれらを補給することが可能です。

海洋深層水の採取方法

日本全国には19箇所の海洋深層水取水施設が設置されています。これらの施設の多くで採用されているのが「陸上型方式」という方法です。この方式では、海底に取水パイプを敷設し、ポンプを使って陸上へと深層水を引き上げています。陸上型方式は、陸地から急に深くなる海域が採取に適しており、コストの面でも有利です。実際に、日本のほとんどの取水施設はこのような地形の場所に設置されています。

海洋深層水の応用例

海洋深層水は飲用だけでなく、食品、化粧品、医薬品、農業、エネルギー分野など、多岐にわたって活用されています。具体的には以下のような利用が行われています。
・食品や飲料
・化粧品
・医薬品やセラピューティックな利用
・農業での肥料や温度制御
・エネルギー生成
・魚類や藻類の養殖

農業では、豊富なミネラルを含む海洋深層水を使って作物の品質を向上させています。熱帯地域では、その低温安定性を活かし、施設の冷却に使用されることもあります。また、海洋深層水を用いたアオノリやマコンブの養殖では、通常よりも栄養価や風味が向上するとされています。さらに、海洋深層水と表層の海水の温度差を利用した発電や、タラソテラピーといった健康促進法にも応用されています。

まとめ

この記事を通じて、「海洋深層水とは何か」についてその特性や活用方法を詳しく紹介しました。海洋深層水は太陽の光が届かない深海から採取されるため、一定の低温を保ち、非常に清潔な水質を維持しています。また、その豊富なミネラルと無機栄養塩は自然の漁場や人工的な養殖にも大いに役立っています。

タイトルとURLをコピーしました