外から見た海は静かに感じられるかもしれませんが、実際にはその水は常に動いています。
この水の動きを「海流」と言います。しかし、なぜ海流が存在するのかを詳しく説明できる人は少ないでしょう。
この記事では、海流についての基本的な情報を明確に説明します。
海流の異なるタイプ、それがどのようにして形成されるのか、そして日本の近海で観測される海流について詳しく解説しますので、ぜひ役立ててください。
海流ってなに?メカニズム、地球規模での水の流れを解明
海流とは、一定の方向に流れる海水の動きを指す用語です。この現象は、潮の満ち引きや予期せぬ波の動きとは異なり、地球全体のスケールでその流れが定まっていることがその特徴です。
地球の表面はおよそ70%が海によって覆われていますが、この広大な水域で海水が絶えず動いているのは自然の法則によるものです。水は暖かい地域から冷たい地域へ流れる性質を持っています。
特に赤道周辺では、太陽の熱が直接届きやすく、そのため海水は温まりやすいです。これに対し、北極や南極などの寒冷地では、赤道よりも太陽の熱が少なく届くため、水温はあまり高くなりません。
このように海水の温度差が生まれることで水流が発生し、それが規模の大きな海流となって現れます。
海流の解説 暖流と寒流の特性とその影響
海流は大きく二つのタイプに分けられます:暖流と寒流です。これらの海流が持続的に循環することで、地球の海水は絶え間なく動いています。
・暖流の特徴
暖流は、主に赤道近くから北極や南極方向へと流れる海流のことを指します。この地域では、海水の温度が高いため気温が上昇し、湿度も高くなるのが通常です。これは温かい海水が周辺の大気を暖め、蒸発した水分が雨となって降るためです。日本近海の代表的な暖流に「黒潮」がありますが、これは九州を過ぎると日本海流と対馬海流の二つに分かれ、それぞれ日本海に流れ込んで、地域の気候を暖かくし、湿度をもたらします。
・寒流の特徴
寒流は、北極や南極から赤道に向かって流れる海流を指します。冷たい地域からくるため、海水の温度が低く、乾燥した特性を持っています。寒流の冷たい水温はプランクトンの繁殖に適しており、水が濁りやすいです。プランクトンが豊富なことから、魚類も多く生息し、そのため暖流と寒流が交差する海域は漁業に非常に適しています。例として、日本の東北地方や日本海沖などは、このような特性を持つ海域であり、豊かな漁獲が期待できる地域として知られています。
海流の形成、表層循環と深層循環の解説
海流の形成には、表層循環と深層循環の二つの主要なプロセスが関与します。
表層循環は、海面近くでの風の影響により海水が動かされる現象です。この動きには、季節による流れや風によって引き起こされる流れが含まれますが、その共通点は風が海流を生み出す主要因であることです。
深層循環は、海の深い部分で起こり、海水が自発的に温度や塩分濃度のバランスを調整しようとする力によって水流が形成されます。このプロセスには、暖かい水が冷たい水と混ざり合う現象も含まれます。また、塩分濃度の不均衡が存在する場合、海水はそれを均一にしようとする過程で水流が生じることもあります。
さらに、地殻の活動により海底に傾斜が生じた場合、それが海流の発生を促す要因となることがあります。このような流れを傾斜流と称し、比較的珍しい現象ですが、浅い海域では海流が海底に影響を及ぼし、地形が海流の形成に影響を与えることがあります。
海流の広範囲な影響、気候変動と漁業への効果
海流は単に海洋に影響を与えるだけでなく、陸上の気候や漁業にも大きな効果をもたらします。これらの影響について詳しく見ていきましょう。
・気候への影響
特定の地域に存在する大規模な暖流は、その地域の気温や湿度を上昇させる傾向があります。例えば、西ヨーロッパは北大西洋海流の影響で、同じ緯度の他地域と比べ温暖です。この海流はメキシコ湾流から続いており、メキシコから西ヨーロッパに向けて暖かい空気を運びます。また、日本の南部が温暖な気候であるのも、「黒潮」という暖流が関係しています。この海流上で発生する南東風が暖かい空気を運び、特に沖縄や九州に温暖な気候をもたらしています。一方で、寒流の「親潮」は冬季に北海道や東北地方に冷たい風をもたらし、日本国内の気温の差が生じる原因となっています。
・漁業への影響
海流は漁業にも重要な役割を果たしています。寒流はプランクトンが豊富で、多様な魚種にとって理想的な生息条件を提供します。しかし、海水温が非常に低いと、一部の魚種は生息できません。そのため、餌が豊富な寒流と生活に適した暖流が交わる場所が漁業に最適とされています。日本でこの条件を満たす地域は三陸沖です。ここでは南からの黒潮と北からの親潮が交じり合うことで、豊かな漁場が形成されており、多くの天然魚介類が捕獲され、養殖にも適しています。
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日本近海の海流の特性と影響
日本近海には、複数の重要な海流が存在し、それぞれが異なる特性を持っています。
・黒潮(日本海流としても知られる)
黒潮は南シナ海から始まり、日本の東海岸沿いを北上する主要な海流です。この海流はプランクトンが少なめであるため、水の透明度が非常に高くなります。黒潮は世界的にも大規模な海流であり、北大西洋海流の源流であるメキシコ湾流と並んで、その影響力で知られています。日本では、太平洋側を流れるこの海流を「日本海流」とも呼びます。
・親潮(千島海流とも称される)
親潮は、千島列島沿いを南下する冷たい海流で、日本の北端近くで発見されます。この海流が千島列島を通過することから「千島海流」とも呼ばれます。親潮はプランクトンが豊富で、これが魚にとって非常に重要な食源となっています。
・対馬海流
対馬海流は、黒潮が対馬海峡で分岐した後に形成される海流です。この海流は「対馬海流」として知られ、日本海に面する地域、特に山口県萩市沖の離島で、その他の同緯度地域よりも高い平均気温をもたらします。
・リマン海流
リマン海流は、樺太方面からユーラシア大陸沿いに南下する海流で、対馬海流が北上することで冷えた後、アムール川の淡水と混ざり合います。この海流は比較的穏やかで、寒冷海性の魚類であるニシンやタラが生息する豊かな環境を提供します。
まとめ
これまでに海流、すなわち海の水の動きに関する情報を紹介してきました。
海流は、海水の温度や塩分濃度、風の影響など様々な要因によって形成されることが明らかになっています。
日本は島国という特性上、多くの海流が周囲を流れています。興味を持った方は、これを機にさらに深く海流について学んでみることを推奨します。